緊急地震速報の問題点

緊急地震速報システム(早期地震警戒システム)が携帯端末に導入されてしばらく経ちました。
しかし、誤報が多く、緊急地震速報の精度に疑問を持たれている方も多いと思います。
そこで、緊急地震速報の仕組みを紹介したいと思います。


・中学理科の復習
地震にはP波とS波があります。P波は伝播速度が速い(5〜7km/s)反面、S波ほど大きく揺れません。一方、S波は伝搬速度が遅い(3〜4km/s)反面、P波より大きく揺れます。
地震が発生した直後はカタカタ揺れ、その後、大きく揺れるのは2つの地震波が届く差があるからです。
P波が到達してからS波が到達するまでの時間を初期微動継続時間と言います。おおよその目安になりますが、初期微動継続時間の秒数に8を掛けると震源からの距離(km)になると言われています。


・緊急地震速報の仕組み
原理はそれほど難しくありません。
地震計が伝搬速度の速いP波を検知したら、そのデータから震源や地震の規模を推定します。
計算した結果、強い地震が想定される場合、緊急地震速報を発報するようになっています。
※ただし、地震計の故障による誤報を防止する為に、実際には複数の地震計でP波を検知した場合に計算するようになっているようです。


・緊急地震速報の種類
緊急地震速報には一般向けと高度利用者向けの2種類のサービスがあります。
テレビや携帯端末の緊急地震速報は一般向けのサービスです。
一般向けサービスは震度5弱以上の地震波を検知した場合、震度4以上の地震が見込まれる地域に速報値を発報します。
高度利用者向けは地震発生を伝える第1報と、複数の地震計に到達した地震波を解析し、第2報、第3報と精度を上げた情報を順々に伝えていきます。高度利用者向けだと、到達予想時刻を表示したり、緊急地震速報が誤報だった場合のキャンセル報に対応しています。


・緊急地震速報が発報させるまでの時間
一般向け緊急地震速報(速報値)が発報されるまで平均6.6秒だそうです。震源から50kmくらい離れてないと緊急地震速報を受信する前に地震に遭遇します。
意外に時間が掛かるものなんですね。


・東日本大震災で緊急地震速報が鳴らなかった原因
東北地方太平洋沖地震の後は何度も経験しているのに、肝心な東北地方太平洋沖地震で緊急地震速報を受信してないことに疑問を持たれている関東地方にお住まいの方がいると思います。
東北地方太平洋沖地震では宮城県沖で地震波を検知し、緊急地震速報を発報していました。しかし、震度4以上と推定された緊急地震速報(速報値)の対象エリアは東北地方だけでした。1000年に1度と言われ、震源域が400kmにもおよぶ連動地震は想定できなかったんでしょうね。


・緊急地震速報の震源地が間違ってる理由
東日本大震災の翌日深夜に新潟と長野の県境で発生した栄村大震災では緊急地震速報の震源地が栃木と表示され、全く異なってたことがありました。
東北地方太平洋沖地震が発生した数日間は常に揺れていました。複数の地震がほぼ同時に発生したり、ある地震が終わる前に別の地震が発生したりと、地震の区切りが非常に分かりづらい状態でした。
また、東北地方太平洋沖地震のせいで地震計が壊れてしまいました。
この状態で強い地震が発生した為、震源や地震の規模を推定する性能が低下してしまったようです。


・自分の携帯だけ緊急地震速報が鳴らない原因
緊急地震速報が受信できる状態にもかかわらず、緊急地震速報が受信されずに、地震に遭遇することがあります。
DoCoMoの携帯だと、電話中やパケット通信中は緊急地震速報が届かないそうです。更に、メールの送受信をした際に、iモードマークが点滅したままの状態で放置してると、画面が解除されるまでの間、緊急地震速報が届かないそうです。
緊急地震速報はより早く地震の到着を知らせる為、再受信の概念がありません。


・携帯キャリアで緊急地震速報の鳴る時間に違いがあるか
気になって調べたところ、DoCoMoの方が早く鳴るそうです。
携帯電話の緊急地震速報は一斉送信する為の特殊な仕組みを設けているのですが、DoCoMoの方式の方がブロードキャスト速度が優れているみたいです。


そんなわけで知れば知るほど色々と前提条件がある仕様で作られている緊急地震速報でありますが、気象庁も今回取得できた連動地震のデータを基に緊急地震速報の精度向上をしているそうです。早ければ秋頃には精度向上が見込まれるのではないでしょうか。
今後、携帯キャリアの遅延や問題も改善されていくことでしょう。

それまでの間、緊急地震速報をオオカミ少年だと思わずに、気長に待って頂けると幸いですm(_ _)m