誰の為、何の為の書類送検なのか

インターネットが普及したおかげでしょうか。航空・鉄道事故調査委員会のサイトにアクセスすることで、過去の航空・鉄道の事故やインシデントに関する調査報告書を見ることができます。

東日本旅客鉄道株式会社羽越線砂越駅〜北余目駅間列車脱線事故の鉄道事故調査報告書は以下のリンクから閲覧できます:
http://jtsb.assistmicro.co.jp/jtsb/railway/report/RA08-4.pdf

鉄道事故調査報告書とその付図合わせて178ページにも及ぶ報告書を読みましたが、この事故が竜巻かダウンバーストと推定される突風により不幸にも発生してしまった事故であったと分かりました。
誰かしら責任を取れという意見も散見しておられましたが、報告書を読む限り、運転手の運転技術、司令員の対応で防げる範囲を超えている。

JR東日本新潟支社の指令室長、総括指令長、指令長を書類送検したとしても、山形地検が不起訴処分と判断せざるを得ないのは妥当な判断だと感じました。

この事故の後、JR東日本では強風時の規制が強化されました。
その結果、関東を台風が通過した2009/10/08は関東圏通勤ラッシュ時間帯に全てのJRが運転を見合わせとなる事態になりました。

その当時関東にお住まいの方で「羽越本線の事故による規制強化が原因だから仕方ない」と思えた方はどれくらいいたでしょうか。
大半の方は「私鉄が動いているのにJRは何をやってるんだ」だと思います。

ちなみに、航空・鉄道事故調査委員会の事故調査報告書の冒頭には以下のような記述が書かれています:

本報告書の調査は、本件鉄道事故に関し、航空・鉄道事故調査委員会設置法に基づき、航空・鉄道事故調査委員会により、鉄道事故の原因を究明し、事故の防止に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。


不幸にも発生してしまった羽越本線脱線事故に限らず、航空・鉄道事故調査委員会で事故やインシデントとして扱われた事例が活用され、今後の事故の減少に繋がることを祈るばかりです。