日本の家庭用交流電源はなぜ100Vなのか?

世界的に見ると、コンセントの形状は違えど、一般家庭で用いる交流電源は110V〜240Vまで存在します。
アメリカは110Vと日本と近い電圧ですが、世界的に見ると200V以上の国が多いです。

そこで、今回、日本の家庭用交流電源は何故100Vなのか疑問に思いまして調べてみましたところ、面白い結果が得られました。

日本に発電所が建設され、本格的に電気が使われ始めた当初は、関西ではアメリカ製の発電機を使用し110V/60Hz、関東ではドイツ製発電機を使用し100V/50Hzの交流電源が供給されていたようです。当時は、電気=電球としての使用が多かった為、110V前後の電圧降下は電球に適してるとのことでした。そんなわけで、他の国に於いても、電気が使われ始めた当初は、110V前後の電圧で供給されていたようです。
また、当時の技術では電圧が高いと絶縁することが難しかった為、低い電圧で供給せざるを得ない事情もあったようです。

その後、絶縁技術の向上等により、諸外国では電圧を高くしていきました。しかし、それが日本ではできなかったようです。
諸外国では発電所が国営であった為、比較的簡単に移行させたようですが、日本では民間主導で電気が普及した為だそうです。ただし、電圧が異なると別々の電球ソケットを作る必要があり、それが繁雑になるとの軍の意向により100V統一されましたが、周波数の違いは統一されず、現在でも関西は60Hz、関東は50Hzとなっています。

しかし、日本も世界標準に合わせ、家庭用交流電源を230V化しようという動きがあるようです。

JEMA | 社団法人日本電機工業会
「配電電圧昇圧と電線地中化推進のための提言」について(PDF)
 配電電圧昇圧についての今後の課題(PDF)

現在、電柱の電線は6,600Vの三相交流で供給されています。それを電柱の横に付いているトランス(変圧器)で200V、または、100Vに変圧しているのです。それを、電線地下埋設時に22,000Vの三相交流にし、トランスで家庭用交流電源用に400V、または230Vに変圧しようという検討らしいです。

利点は幾つかあります。
まず、物理を学習している方ならお分かりだとは思いますが、電圧が高い方が電力損失が低いからなんですね。これが実現できれば、電柱のトランスからコンセントに到達する前までに失われる電力を減らすことができ、結果として省エネが実現できます。
次に、世界標準の電圧に合わせれば、日本国内で製造した電化製品を他国に持って行きやすいメリットはできそうですね。日本国内専用にカスタマイズする必要がなく、コンセントの変換プラグがあれば、電圧変換をしなくてもそのまま使える機器が増えそうです。

問題は、家庭内に多くの電子機器が存在し、100V対応の配線が建物内に配線されている状況で、簡単な工事で電圧を上げるという訳にいかないということでしょうか。
また、地中内に電線を埋設する際に低コストで実現する方法は、まだ検討中だそうです。100Vしか対応できない建物と230Vに対応可能な建物がある場合に、両方に対応する為のトランスが必要そうですし、電線を埋設すればそれでOKという訳ではないのが難しいところです。でも、交流の電圧変換はコイルの巻数の比で比較的簡単に変圧できそうなので、コストが著しく跳ね上がることはないとは思います。

まあ、地デジ問題ですらこれだけ揉めていることを考えると、数年後に突然昇圧しますってことはないでしょうから、10年、20年先を見据えてどうするかってことなんでしょうか?

昇圧に期待はしていませんが、電線の地下埋設と電柱の撤去は期待しておきましょう。