写真産業の転換期

 ITmediaからのニュースを2本ほど。

ニコン、銀塩カメラを大幅縮小
カメラと言ったら、フィルム(銀塩)カメラのことを意味するのはもう昔の時代となろうとしています。
デジタルカメラが普及している関係で銀塩カメラの規模が大幅に縮小してきており、日本光学もとうとう銀塩カメラの事業を大幅縮小することを決定したようです。
その次のニュースを聞くときは、もしかしたらニコンが銀塩フィルムカメラから撤退するときなのかもしれませんね。

コニカミノルタ、カメラから撤退 ソニーが「α」を継承
ニコンのニュースから一週間後にこのニュースを聞くことになるとは思いませんでしたorz
コニカミノルタがカメラ事業から撤退です。
コニカミノルタは銀塩カメラが縮小していく中でデジタル一眼レフカメラを発売していましたが、デジタルカメラ業界はキヤノンの一人勝ち状態がずっと続いており、ニコンが辛うじて追ってる感じの構図が出来上がっていました。また、デジタル一眼レフカメラは精密回路の実装や撮像素子にあたるCCDの開発が必要なので光学技術だけでは開発ができなくなってしまったのが大きい要因のようです。
BCNランキングの記事を見る限り、コニカミノルタ以外にもデジタルカメラから撤退する企業が出てくるかも知れませんね。

コニカミノルタのカメラからの撤退ですが、デジタル一眼レフカメラ自体は共同開発を行っていたソニーが継承してくれるようなので、αシリーズのレンズが直ちに無駄になるというわけではないようです。せめてαシリーズだけでも頑張ってほしいですね。

しかしながら、現在所持しているミノルタの機器を維持していくのは難しくなりそうですね。
本当に寂しいです。


では、おなじみ技術ネタコーナーとして今回はフィルムとCCDについてお話をしたいと思います。

銀塩カメラなど銀塩という単語が使われているものは、フィルムカメラのことを意味します。銀塩という単語は、化学系でイオン化合物を意味する(えん)と、フィルムの感光剤に使われているイオン化合物である臭化銀とヨウ化銀の銀から由来する単語です。
フィルムは、ご存じの通り、光を当てることで感光し、それを現像することで写真として印刷できるような形になるわけです。

しかし、このフィルムにはネガフィルムとポジフィルムという二つ種類があるのです。
我々がよく言うネガというのがネガフィルムのことで、現像すると1コマ、1コマが逆の色で存在しています。つまり、本来とは逆の色なのでネガティブなフィルムなわけですね。
では、ネガの逆はあるのかというと、それがもう一種類のポジフィルムというものなのです。もちろんポジティブフィルムの略です(笑)
ポジフィルムは、フィルムを見ても同じ色で再現されているので現像されたフィルムを見ればどんな色で撮影されているかすぐに分かります。スライド写真なんかで使用されるものは、ポジフィルムで撮影したものか、ネガフィルムを更に反転処理させてポジフィルムを作成したものです。

別にポジフィルムがあるならば、ネガフィルムなんかいらないじゃん...って思われるかも知れませんが、ネガフィルムと違い、ポジフィルムは現像後の調整が難しいという弱点があります。製造してからの有効期限もネガフィルムより早いため、ポジフィルムは主にプロ仕様という感じで使われています。
カメラショップやヨドバシカメラなど大きい家電量販店のカメラコーナーに行くと、「○○クローム」という聞かないフィルムが販売していますが、それがポジフィルムです。興味がある方は覗いてみてください。

次に、CCDについてです。
CCDとはCharge Coupled Device(電荷結合素子)のことで、光電変換をするための装置のことです。光電変換自体は高校物理でやったことがある人もいると思いますが、ソーラーパネルも光電変換を利用して発電しているわけです。
CCDはデジタルカメラとは切っても切れない関係にありまして、銀塩カメラではフィルムを利用して記録するのに対し、デジタルカメラではCCDを使って記録します。基本的な仕組みは、光電変換できる素子が格子状にびっしり並んでいて、入ってきた色の強さを電圧に置き換え、デジタル的に記録するのです。

フィルムで撮影する銀塩カメラの利点は、現像したフィルムが残っていれば再び写真にできるということです。フィルムをデジタルカメラの画素数に当てはめた場合、単純には比較できませんが、1000万画素〜2000万画素と言われています。現在、そのスペックで発売しているデジタルカメラは何十万するプロ仕様のデジタルカメラしかありません。単純に考えれば、銀塩フィルムを使っているならば、どのようなカメラを使用していても同じ画素数で記録されているということになります。しかし、フィルムも印画した写真もアナログ故に経年劣化する弱点があります。また、フィルムを現像するまで撮影したものがどのように写っているか分からない、プロの人を除いて現像処理は写真ラボにお願いしなければなりません。

一方、CCDで撮影するデジタルカメラの利点は、デジタルなので、そのデータが残っている限り情報が欠落することはありません。また、その場で撮影したものが確認できるので、現像処理などを行う必要はなく、撮影に失敗した写真はその場で削除することができます。しかし、デジタルデータを保存するコンパクトフラッシュやハードディスクが破壊されてしまうと、何百枚、何千枚のデータが一瞬で消えてしまう危険性もあります。それを防ぐために、プリンタで印刷してしまうと、結局のところフィルムカメラと同じになってしまうわけです。また、CCDは撮像素子が格子状になっているために、斜線上のオブジェクトを撮影すると変な縞模様がノイズとして紛れ込んでしまう場合があります。フィルムでは感光色素はランダムに配置しているのでそのようなことはありません。

平成15年には銀塩カメラとデジタルカメラのシェアが逆転していますが、全てにおいて銀塩カメラ(フィルム)に勝てるようになるには、CCDの大きさが35mm x 24mmである、撮像素子がランダム配置(?)のCCD、画素数が1500万画素以上になる必要があるのではないかなと思います。

現在でも上の条件を満たしそうなデジタルカメラはありますが、プロ仕様ではなく、一般の人がそれを手にできるまでにはまだ数年はかかりそうですね。


今回はちょっと長くなりましたが、カメラ業界の現状と、銀塩カメラ、デジタルカメラのお話について書いて忌みました。